マザー・ウォーター
彼女の身体は、ふつうの人よりも、水分含有量が多いらしい。
そういう体質なのだそうだ。
そのためか、夏、スイカを食べた後の彼女の身体は、しばらくひんやりと冷たく、
冬、お味噌汁を飲んだ後の彼女の身体は、しばらくの間、じんわりと温かく感じた。
水枕とか、湯たんぽとおなじ原理なのかもしれない。
彼女の瞳は、たまに、虹のような遊色が現れることがある。
ウォーターオパールのように、光の屈折によって現れる美しい色だ。
ぼくは、水槽を通した光が床に虹色を映す、そんなときと同じその色に、とても惹かれた。
入浴剤の色によって、少しだけ彼女の身体も色がついたりする。しばらくすると肌色に戻る。
なんとか温泉のエメラルドグリーン色の入浴剤を使った後の彼女のおしりは、ぼくのいいおもちゃになった。
眠れない夜、彼女の身体に耳をあてる。
拍動が水分に反響し、海のような音が聞こえてくる。
女は海だというけれど、ああ本当だ、と思った。
体内に凪を湛えた彼女は母なる海のようだと思った。
そんなことを考えてるうちに、ぼくはいつのまにか眠気の波に身を任せているのである。