物語を売り買いする

すべては妄想の産物である

結実

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ふかふかの地面にタフィを埋めると、タフィの実が成るらしい。

ということを、本で読んだ。

タフィの実はタフィではないらしいのだけど、タフィを思い起こさせるような味をしているらしい。

 

というので、さっそく私も試してみた。

ふかふかの土にした裏庭に、べっこう飴を埋めてみた。

日が経ち、芽が出、苗がすくすく育ち、小さな木となった。

そこには黄色く小さな実が成った。

ひとつもいで、うすい皮を剥き、口に含んでみると、固い実ではあったが、じんわりと濃い甘さを感じた。

たしかに、べっこう飴を思い起こさせる味をしている。

 

今度は、以前、好きな人からもらった手紙を埋めてみた。

日が経ち、芽が出、今度はつるのように地面を這った。

そこには、緑色に白い斑点のついた実が成っていた。

ひとつもいでみると、やわらかい実のようだったので、水洗いし、かじりついた。

梨のような甘さを感じた。だが、後味に、かすかな塩味が残った。

そのとき、私は、その手紙に、かつてたくさん涙が落とされたことを、思い出したのだった。

たしかに、かつての恋を思い起こさせる味をしている。