空とその細君のおはなし
その少女は優しく、聡明であったため、空に見初められた。
空は彼女の前に跪き、心からの言葉を尽くして求婚した。
少女は悩んだが、それを承諾した。
空の下、彼女は強く美しく育った。
雨の日も、風の日も、彼女は空に愛されていることを感じた。
ある日、彼女は空に語りかけた。
あなたの悲しみは、雨なのですか。
空は返した。
「いいや、雨は、雲のこころだ
雲は私の下にいる。雲は豊かに雨や、雪で、自分を表現するだろう
その向こう側の私はいつも青い。」
そして言葉を少し詰まらせた。
「あなたの悲しみを知りたいわ」
「そうか。では、目をつぶるといい」
目を閉じた彼女は、自分が、宇宙に居ることを知った。
そこには上も下も、右も左もなく、ただただ黒い空間があるばかりだった。
妻よ。それが私の悲しみだ。
空の声がどこからともなく聞こえた。
彼女は涙を流したが、涙はふうわふわと空間を漂い、彼女から悲しむことを奪っていった。
目を開くと、そこは自分の家の庭。
見上げた空は今日もひたすらに青い。