物語を売り買いする

すべては妄想の産物である

蝶の自我

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水田に張られた水が鏡になって、蝶に自我が芽生えた。

蝶は思わず、水面を乱した。

大きな鏡は体を震わせ、少しずつ、自分を取り戻していった。

 

「生き物の苦しみの種は自我にあるのかもしれないと思わないかい?」

水は言った。

自分の肢を、自分自身の姿を認識することが、苦しみへの第一歩。

そしてそれが快楽を齎すんだ。苦しみに向かうことで快楽が産まれるんだ。

 

水は、生まれたばかりのオタマジャクシを包みに行った。

水田の片隅で、苦しみは保育されている。