物語を売り買いする

すべては妄想の産物である

はちみつのネックレス

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秋のある時、道端で女王蜂が倒れていました。寒い日でした。

大丈夫?と尋ねても返事はなく、死んだのかな、と思いました。

すると「花を」と、どうやら、その女王蜂が言ったようでした。

「秋だからめぼしい花はないけど」私は秋の野花を摘み、差し出しました。

女王蜂は眉間にしわを寄せ、しかしそれらの蜜を口にしました。

しばしの後、「まぁ、なんとか帰れるわ」と彼女は言いました。

口調とは裏腹に身体は、つらそうでしたが。

気を付けてね、と言うと、例の代わりに、このネックレスを渡されました。

そして「これ、蜜に似てるんだけど、食べれないのよね。むかつく」と吐き捨てて、飛んでいきました。

ひんやりとしたそのネックレスを受け取り、蜜に模して造られたその樹脂を

太陽に透かし見ながら、私は家に帰りました。